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STORY
ストーリー

プロジェクト

シン・マーケティングプロセス戦記【2】

OUTLINE

あなたのチームに、圧倒的な経験とセンスで次々と課題を解決していく、スーパーエース、いわゆる「あの人」はいないでしょうか。たしかに「あの人」はヒーローかもしれません。が、もし「あの人」が異動になったら?転職してしまったら?特定の個人のスキルやひらめきに依存した状態は、組織にとって実は非常に脆いものではないでしょうか。

「あの人だからできた」をなくしたい。

これは、JR西日本グループのDXを担う私たち、株式会社TRAILBLAZERの有志メンバーが、そんな「属人化」という名の亡霊に立ち向かうために立ち上がった物語です。部署も経験も異なる私たちが、それぞれの知見を持ち寄り、「誰でも」「再現性高く」マーケティングで成果を出すための“地図”、「シン・マーケティングプロセス」を作り上げるまでの冒険の記録、第二回です。

CLIENT

西日本旅客鉄道株式会社

MISSION

JR西日本では、生活インフラを支える様々なサービスとデジタルサービスを融合することにより、さらに便利で・おトクで・楽しい、ゆたかな生活を実現することを目指しています。 安定・安心・安全が求められるインフラ事業と、変化と進化の求められるデジタルサービスを融合し、お客様価値を高め続ける、という課題にチャレンジしています。

PROJECT MEMBER

Y.O(記事中の名前:岡村) データコンサルティング事業部

K.M(記事中の名前:皆川) ソリューション事業部

S.K(記事中の名前:清原) ソリューション事業部

R.K(記事中の名前:金井) ソリューション事業部

D.I(記事中の名前:稲本) データコンサルティング事業部

M.S(記事中の名前:佐々木) データコンサルティング事業部

【第2話】巨人の肩の上に立つ!〜偉大なフレームワークたちと我々の“一手間”〜

イントロダクション

マーケティングの世界は、強力な「フレームワーク」で溢れています。3C分析、SWOT分析、PEST分析──。これらは先人たちが遺した偉大な知恵であり、ビジネスという戦場を生き抜くための武器とも言えます。多くのビジネスパーソンが、研修や書籍を通じて一度はこれらの武器を手に取ったことがあるでしょう。

しかし、いざ実戦で課題という魔物を前にした時、こう思った経験はないでしょうか。 「どの武器から使えばいいのだろう?」「分析はしてみたが、この結果から次に何をすればいいのかわからない」

せっかく手に入れた武器も、鞘から抜かれることなく宝の持ち腐れになる。あるいは、やみくもに振り回してしまい効果がない。これは、日本の多くの会議室で繰り広げられている悲しい現実かもしれません。

本記事のポイント

 「知っている」と「使える」の壁。 多くのマーケティングフレームワークは「点を分析する」ツールであり、それらを「線」で繋ぎ、具体的なアクションに落とし込む方法論が欠けているため、分析が「やっただけ」で終わってしまう。

●   解決策は「インプットとアウトプット」の定義。 各分析工程の「インプット(何をもとに考えるか)」と「アウトプット(何を次の工程に渡すか)」を明確に定義し、連結させることで、バラバラな知識が実用的な「プロセス」へと変わる。

●   プロセスの本質は「カレー作り」にあり。 複雑なマーケティングプロセスも、日常的な料理の工程に例えることで、各ステップの繋がりと完了条件が明確になり、チームの共通認識を醸成できる。

解くべき課題:「で、結局どうするの?」問題

この問題は、マーケティングに関わる人なら誰もが一度は直面するのではないでしょうか。通称「So What?(で、結局どうするの?)問題」です。

例えば、あなたが渾身のSWOT分析資料を上司に見せたとします。強み(Strengths)、弱み(Weaknesses)、機会(Opportunities)、脅威(Threats)が完璧に整理されている。しかし、報告を受けた上司の反応は「なるほど。で、結局我々は何をすべきなのかな?」。この一言で、あなたの分析は具体的なアクションに繋がらず、ただの「情報整理」で終わってしまいます。

これはフレームワークが悪いわけではありません。問題は、多くのフレームワークが「点」で現状を分析するツールであり、それらを「線」で繋ぎ、次の行動へと導く方法を教えてくれないことにあります。個々の武器は強力でも、必殺のコンビネーション技の出し方は誰も知らない。だから、分析が「やっただけ」で終わってしまうのです。

解決へのアプローチ:点を「プロセス」という線で繋ぐ

「車輪の再発明はしない」。これが、私たちプロジェクトの初期段階での合言葉でした。世界中の賢人たちが生み出した偉大なフレームワークを無視して、我流のプロセスを作るのは非効率極まりない。まずは先人たちの知恵、つまり「巨人の肩の上」に乗ることから始めました。

私たちは、数多のマーケティング関連の書籍やWebサイトを参考に、実務で使えそうなフレームワークをオンラインホワイトボードツール(Miro)上に洗い出していきました。しかし、ただ並べただけでは意味がありません。そこで、私たちは一つのシンプルなルールを設けました。

すべての工程(フレームワーク)に、「インプット」と「アウトプット」を定義する。そして、前の工程のアウトプットが、次の工程のインプットになるように、線で繋いでいく

例えば、「現状事業の把握」という工程のアウトプットは、「事業の重要課題」や「自社の強み・弱み」のリストです。そして、このリストが、次の「事業目的の明確化」という工程のインプットになる。こうすることで、一つひとつの分析が次のアクションに繋がり、思考が着実に前に進んでいく。点が線になり、線が道になる。バラバラだった知識が、初めて実用的な「プロセス」として機能し始める瞬間でした。

プロジェクトでの実践録:「カレー作り」が教えてくれたプロセスの本質

プロジェクト初期、Miroのボードは無数の付箋と矢印で埋め尽くされ、混沌としていました。広告代理店での経験を持つ稲本は、「クライアントに分析結果を見せただけでは『で?』と終わってしまう。分析結果を施策に落とし込むまでしないと議論が始まらない」と、まさに「So What? 問題」の核心に触れる悩みを共有しました。

議論が停滞しかけたその時、元経営コンサルの岡村が問いかけました。「皆さん、カレーを作る時、どういう手順で作りますか? いきなりルーを鍋に入れますか?」。

誰もが当たり前と考える「野菜を準備し(インプット:野菜)、野菜を切る(プロセス:野菜を切る、アウトプット:切られた野菜)、それを炒める(次の工程のインプット:切られた野菜)」という料理の工程。この身近な例えが、チームにとって大きなブレークスルーとなりました。プロセスの本質は、各工程のアウトプットを、次の工程のインプットとして明確に繋ぐことにある。この単純明快な原則に、全員が気づいたのです。

この「カレーの例え」を機に、議論は一気に加速しました。「現状把握のアウトプットは、事業目的を定義するためのインプットだ」「目的が明確になれば、それがターゲット設定のインプットになる」。メンバーは、混沌としていたフレームワーク群を、インプットとアウトプットの関係性で次々と繋ぎ合わせ、整理していきました。

カオスだったボードに、次第に一本の大きな「流れ」が見え始めた。それは、まだ荒削りではあったものの、「誰でも、この順番で考えれば、ゴールにたどり着ける道」、すなわち「シン・マーケティングプロセス」の原型が生まれた瞬間でした。

今回のまとめ

●   フレームワークは単体ではなく「プロセス」として連結させてこそ価値を生む。 個々の分析ツールを、次のアクションに繋がる一連の流れとして設計することが重要です。

●   各工程の「インプット」と「アウトプット」を定義せよ。 「何をもとに考え(インプット)」「何を次の工程に渡すか(アウトプット)」を明確にすることで、思考の迷子や手戻りを防ぐことができます。

●   複雑な問題は、身近な例えで構造化する。 「カレー作り」のように、誰もが共通認識を持てるモデルに置き換えることで、複雑な課題の本質をチームで共有しやすくなります。


【次回予告】 第3話:航海図なき船の悲劇〜なぜ目的はひっくり返るのか?〜

最高のプロセス(航海図)を描いたはずだった。しかし、船長(偉い人)の一言で、船は突如、目的地とは違う方向へ進み始める…。プロジェクトで最も恐ろしく、そして最も頻繁に起こる「目的のちゃぶ台返し」。次回、私たちが実際に経験した失敗談を基に、この悲劇を防ぐための強力な仕組みについて語ります。


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