MENU

entry()

STORY
ストーリー

プロジェクト

シン・マーケティングプロセス戦記【1】

OUTLINE

あなたのチームに、圧倒的な経験とセンスで次々と課題を解決していく、スーパーエース、いわゆる「あの人」はいないでしょうか。たしかに「あの人」はヒーローかもしれません。が、もし「あの人」が異動になったら?転職してしまったら?特定の個人のスキルやひらめきに依存した状態は、組織にとって実は非常に脆いものではないでしょうか。

「あの人だからできた」をなくしたい。

これは、JR西日本グループのDXを担う私たち、株式会社TRAILBLAZERの有志メンバーが、そんな「属人化」という名の亡霊に立ち向かうために立ち上がった物語です。部署も経験も異なる私たちが、それぞれの知見を持ち寄り、「誰でも」「再現性高く」マーケティングで成果を出すための“地図”、「シン・マーケティングプロセス」を作り上げるまでの冒険の記録です。

CLIENT

西日本旅客鉄道株式会社

MISSION

JR西日本では、生活インフラを支える様々なサービスとデジタルサービスを融合することにより、さらに便利で・おトクで・楽しい、ゆたかな生活を実現することを目指しています。 安定・安心・安全が求められるインフラ事業と、変化と進化の求められるデジタルサービスを融合し、お客様価値を高め続ける、という課題にチャレンジしています。

PROJECT MEMBER

Y.O(記事中の名前:岡村) データコンサルティング事業部

K.M(記事中の名前:皆川) ソリューション事業部

S.K(記事中の名前:清原) ソリューション事業部

R.K(記事中の名前:金井) ソリューション事業部

D.I(記事中の名前:稲本) データコンサルティング事業部

M.S(記事中の名前:佐々木) データコンサルティング事業部

【第1話】僕たちは“地図”なき航海に出ていたのかもしれない〜なぜプロセスは必要なのか?〜

この物語冒険者 たち(メンバー紹介)

この物語は、TRAILBLAZERという会社で働く、部署も経歴もバラバラな有志たちによる挑戦の記録です。それぞれの武器と専門知識を持った個性豊かなメンバーが、時に和気あいあいと、時に白熱した議論を交わしながら、マーケティングの「暗黙知」を「形式知」に変える旅路を、どうぞお楽しみください。

Y.O(記事中の名前:岡村) – 論理の探求者 – コンサルティングファーム出身のロジカルシンカー。どんなカオスな状況でも構造化し、物事の本質を見抜く鋭い視点を持つ。口癖は「それはつまり、こういうことですね?」。本プロジェクトの発起人。

K.M(記事中の名前:皆川) – UXの魔術師 – UXデザインと顧客戦略のプロフェッショナル。議論を活性化させる触媒役。「ユーザーの熱狂からすべては始まる!」が信条の情熱家。

S.K(記事中の名前:清原) – PdMの守護神 – 豊富なプロダクトマネジメント経験を持つ、プロダクトの守護神。議論が発散しすぎると「で、ToDoは?」と冷静に軌道修正するチームの良心。情報整理とドキュメンテーションの達人。

R.K(記事中の名前:金井) – リサーチの職人 – UXリサーチとデザインの専門家。「それってユーザー本当に嬉しいんですか?」と本質を突く問いを投げかける、ユーザー体験の番人。エモい体験の創出に情熱を燃やす。

D.I(記事中の名前:稲本) – マーケの知恵袋 – 広告代理店や大手情報サービス会社で腕を鳴らしたマーケの知恵袋。豊富な経験から、議論に多様な視点と「それ、あるある!」な具体例をもたらす穏やかな理論家。

M.S(記事中の名前:佐々木) – 期待の新星 – コンサル・事業会社の戦略企画出身で、プロジェクトの後半から合流する新メンバー。鋭い分析力とユーザー視点で、固まりかけたプロセスに新たな化学反応を巻き起こす。(第7話から登場)

※本連載は、クライアントの情報、登場人物の個人情報を守るため、現実と作り話が入り交じり、誇張や改変を加えています、つまり事例などはフィクションと考えてお楽しみください。また、画像や文章の一部に生成AIを活用しています。


本記事のポイント

●   マーケティングの「属人化」が組織にもたらす弊害。 特定個人のスキルに依存することは、再現性の欠如や組織力の低下に繋がり、持続的な成長を妨げるリスクとなる。

●   課題解決の鍵は「暗黙知」の「形式知」化。 個々のマーケターが持つ経験や勘といった「暗黙知」を、誰もが実践可能な「形式知(プロセス)」に昇華させることが、組織全体の能力を底上げする。

●   変革は現場の問題意識から始まる。 TRAILBLAZERの自由闊達な文化を土壌に、本プロジェクトがトップダウンではなく、部署を横断した有志によるボトムアップの活動として始まった経緯を紹介する。

解くべき課題:なぜマーケティングは「属人化」するのか

多くの組織が、マーケティングの成果を特定の個人のスキルに依存してしまう「属人化」という根深い課題を抱えています。なぜこの問題は発生するのでしょうか。

その背景には、マーケティング活動が個人の「経験・勘・度胸(KKD)」といった暗黙知に頼りがちになる構造があります。その結果、以下のような弊害が生まれます。

●   再現性の欠如: 「あの人」がいなければ、過去の成功を繰り返せない。成功も失敗も個人のものとなり、組織としての学びが蓄積されない。

●   ノウハウの非共有: エースの頭の中にある貴重な知識や判断基準が、チームの共有資産にならない。

●   組織力の低下: メンバーがエースの指示待ち状態に陥り、思考停止を招く。これでは、組織全体のマーケティング力は向上しない。

KKDが悪いと言っているのではなく、KKDはきちんと使いこなすべきものであり、 優れたマーケターの思考プロセスには、必ず共通の「型」や「判断基準」が存在するはずです。それを言語化し、誰もが使えるツールへと昇華させること。それが私たちの挑戦の出発点でした。

解決へのアプローチ:「暗黙知」から「形式知」へ

この課題に対する私たちのアプローチは、極めてシンプルでした。まず、プロジェクトメンバーがそれぞれの現場で培ってきた知識や経験、成功体験や失敗談といった「暗黙知」を持ち寄ることから始めました。そして、それらを誰もが理解し、実践できる「形式知」、つまり体系化されたプロセスへと転換していきました。

それは一人ひとりが持つ武器や防具を一度テーブルの上に出し合い、チームとして最強の装備を組み立てるような地道な作業でした。遠回りに見えても、これこそが「属人化」を乗り越える唯一の方法だと私たちは信じて、このアプローチを進めていきました。

プロジェクトでの実践録:一つの問題意識から始まった挑戦

2024年11月、すべては社内の何気ない会話から始まりました。異なるプロジェクトを担当するメンバー間で、「マーケティング施策の意思決定が、客観的な根拠よりも個人の経験則に依存しがちではないか」という共通の課題意識が浮かび上がってきたのです。

あるメンバーは、前職でエース社員の異動によって事業が大きく傾いた経験を共有し 、また別のメンバーは、クライアントとの会議で議論の前提となる「事実」の認識が揃わず、戦術レベルの話に終始してしまって非効率な議論となった経験を話しました。

こうした現場のリアルな課題に対し、UXデザインを専門とする皆川から、「各メンバーが持つ暗黙知を体系化し、誰でも再現可能な“レシピ”として形式知化すべきだ」という提案がなされました。この提案が、プロジェクトの方向性を決定づけるきっかけとなったのです。

その議論を受け、元経営コンサルの岡村が「面白い。ではまず、我々が目指すゴール、つまり『美味しい料理(=成果の出るマーケティング)』とは何か。その定義から始めよう」と、これまで皆が漠然と抱えていた問題意識をまとめるための具体的なプロジェクトへと転化しました。PdM、リサーチャー、広告業界出身者など、多様なバックグラウンドを持つメンバーがこの趣旨に賛同し、「シン・マーケティングプロセス」と名付けられたこの挑戦は、静かに、しかし確かな熱量を持ってスタートしたのです。

今回のまとめ

●   マーケティングの「属人化」。属人化は個人の能力の問題ではなく、組織の持続的成長を阻む構造的な課題である

●   課題解決の鍵は「暗黙知」の「形式知」化。 個々の経験則や成功体験を言語化・体系化し、チームの誰もが使えるプロセスに落とし込むことが、組織全体の能力を底上げする。

●   変革は現場の問題意識から始まる。 部署や役職を越えて課題を共有し、ボトムアップで解決策を探る文化が、イノベーションの土壌となる。


【次回予告】 第2話:巨人の肩の上に立つ!〜偉大なフレームワークたちと我々の“一手間”〜

マーケッターの思考プロセスを知る上で欠かせないのが、考え方が「型化」されたマーケティングフレームワーク。
「3C分析?SWOT分析?知ってはいるけど、うまく使えない…」世に溢れるマーケティングフレームワークを前に、多くのビジネスパーソンが抱える悩み。次回は、点として存在する偉大な知識を、いかにして実践的な「プロセス」という線で繋いでいったのか、我々の試行錯誤の物語をお届けします。


entry() エントリー