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STORY
ストーリー

プロジェクト

デジタルの力で日本社会の課題を解決する。JR西日本の「異端児」がめざす未来とは

OUTLINE

新幹線の保守担当を経て、JR西日本のデータ戦略・マーケティング施策を推進してきた宮崎 祐丞。デジタル施策を実行支援する新会社TRAILBLAZER(以下、トレイルブレイザー)が2023年10月に設立され、取締役に就任しました。社内で「異端児」と呼ばれる宮崎が、自身の経歴や新会社の展望を語ります。
※これは2023年12月4日にTalentbookに掲載された記事です。

大切なのは「誰が言ったかではなく何を言ったか」若手時代から保守業務で提案を重ねる

AIとの出会いは、土木工学を専攻していた学生時代にさかのぼります。当時は、地域防災計画のシミュレーションに、AIを適用する研究をしていました。たとえば、水害で河川が溢れたときに、住民の方を避難所に誘導する、ダムの制御水を放流するなど、一連の流れをシミュレーションするんです。

今では普及が進んでいるディープラーニングのような学習AIとは違い、膨大なデータをルールにもとづき再現する仕組みで、2010年代の急速なAIの発展をいち早く理解することができました。当時からの進化に驚きをもって吸収でき、現在のAI技術を理解する素地となった経験です。

京都大学時代のラクロス部での経験も、今のスタイルにつながっています。ラクロスは当時マイナースポーツで、私の所属していた部も創立5年目でした。サークルの延長のような感覚で練習方法もまだ確立しておらず、部員同士で議論したり洋書から技術について学んだり、手探りで部を運営していましたね。そのおかげで、何もないところからチームをつくっていくベンチャー気質が磨かれました。破天荒な仲間たちとの出会いも大きいです。マイナースポーツだったラクロスをやっているだけあって、突き抜けた人ばかり。各界のパイオニアとして活躍している人が多く、今でも仕事で助けられています。私は社内で「異端児」と呼ばれていますが、足元にも及びません。そうした仲間と培った価値観があるからこそ、JR西日本という大企業の中で「当たり前」の枠を超えて挑戦ができたのだと思います。

JR西日本へ入社後は、主に新幹線の軌道保守分野の技術者としてその安全性・競争力向上施策に従事しました。現在は、戦略アナリティクスによる効果的なマーケティングや、AI&IoTの活用による鉄道車両・地上設備メンテナンスの生産性向上をめざしながら、JR西日本のデジタルトランスフォーメーション(DX)をリードしています。

私が仕事をする上で大切にしている考えは、「誰が言ったかではなく何を言ったかが大切である」ということ。そう考えるようになったきっかけは二つあります。一つめ はキャリアのターニングポイントとなった、若手時代に経験した鉄道の保守業務です。私が入社した2001年当時は人力作業がメインで時間が膨大にかかっていました。決められたルールを代々引き継いで作業していたのですが「もう少し合理的にできないか」と考え、簡易的な機械を用いて測定することを提案。線路のゆがみを従来にない連続性をもって定量化し、設備管理をよりシステマチックに行うことで、精度の高いデータをスピーディーに測定できるようにしたんです。盲目的に労働集約的な作業指示に従うのではなく、現地現物と最新のテクノロジーを組み合わせることにより、ボトムアップで合理的な意思決定の仕組みを実現できたことが、自信につながりました。この変革で、メンテナンスの優先順位をつけられるようになり効率的な作業が可能になりました。今では、この方式が会社全体のスタンダードになっています。

二つめは、当時から会社が労働人口の減少に対して危機感を持っていて、実際に工事現場で作業をする方の待遇改善や安全の確保などの施策に携わる機会があったことです。グループ会社や協力会社の現地作業のほか、バックオフィスでの業務にかかる時間、負荷を定量化することにより、サプライチェーン維持・向上のための適切な経費率を算出し、現場の実態に沿った対応ができるようにしました。この帰納法的アプローチがキモになったと感じています。経営的な視点で組織やチームをどう維持向上させていくかを考えることができ、とても重要な体験でした。

現在ではこの考えがチームにも浸透。若手社員でも意見を言いやすい環境が整っていて、実際に提案を採用したことも多くあります。今まではテクノロジーの制約や情報格差によって、経験ある人が演繹法的に仮説を生み出していましたが、データの世界では全件全粒度の分析によって帰納法的に仮説を生み出すことができるようになってきました。経験則とデータから導き出される「確率的に正しい仮説」を組み合わせ、矢継ぎ早に検証していくことで、周囲からの信頼を得るとともに、全体を動かすだけの説得力を高めていけるようになったと自負しています。

わずか4人で新チーム立ち上げ。徐々に仲間が増え、会社全体のデータ戦略をけん引

海外への憧れと会社の外の世界に触れたいという理由で、イギリスに留学しました。ヨーロッパの鉄道は日本に比べて土地にゆとりがあるからか、人力ではなく機械で施工することが多いのが印象的でしたね。危険な作業に人を介在させずにオートメーション化している点は、本当にすごいなと感じました。

30代後半で社内の海外留学制度を利用し留学させてもらったので、単に学位を取るだけではつまらないと思い、留学先のサウサンプトン大学の指導教官のツテ、展示会での出会いをきっかけにNetwork Rail、HS2、DBなど現地の鉄道インダストリーとのネットワークを広げました。その結果、最後の1年はイギリスの高速鉄道設計を受託するグローバルの建設コンサル会社でtemporary workplacement(学生が就業を体験する取り組み)のポジションを獲得。インターンとして経験を積むことができ、高速鉄道の保守運用後の設計について微力ながら貢献できたことが非常に刺激になりました。

日本に帰国後、線路に使う枕木を自動で交換する大型機械の導入プロジェクトを主導した結果、大幅な効率化に成功し、留学の経験を活かせたプロジェクトでした。

その後、2017年に技術企画部システムチェンジⅢが発足し、AI・データサイエンスにもとづいた業務改善に本格的に取り組むようになりました。メンバーは私を含めてたった4人で、専門的な業務経験がある人は誰もいなかったのです。外部パートナーを選ぶため「新幹線の着雪量予測モデルの構築」を題材にコンペを開催したところ、意外なことにJR西日本の社員2人が入賞しました。2人は趣味でデータサイエンスを学んでいたそうで、その後、貴重な戦力としてチームに加わってもらいました。社内の埋もれた才能をきちんと活かしていくことが一つの転機になったと感じています。この結果を見て、データサイエンスに興味がある社内の若手が手を挙げてくれ、今では50人規模にまで成長。立ち上げから6年間、現在まで1人も退職していないのは自慢なんです。

着雪量予測モデルによって、1日数百万円のコスト削減に成功したものの、私の出身である線路部門以外からはなかなか仕事を任せてもらえませんでした。他の部署から見れば、実績も専門知識もない私たちは信頼できないと思われて当然です。そこでまずは出身部門の領域で成功事例を積み上げ、私たちのチームが業務効率化に貢献できると知ってもらうことからスタートしました。社内の実績発表の場でアピールするのはもちろん、マスコミにも取り上げていただき、部署間の口コミなどもあり徐々に認知を広げていきました。その結果少しずつ、データやマーケティングの専門集団として社内で認められるようになったのです。

2020年には、新設されたデジタルソリューション本部のメイン組織としてチームごと移籍。JR西日本におけるデータ戦略をけん引してきました。

そして、2023年10月、高度なデジタル人材を確保し、JR西日本グループのDXを支援するトレイルブレイザーの取締役に就任しました。

飽くなき好奇心、続く挑戦。JAXAや京大大学院と連携し、「快適な暮らし」の実現へ

これまで、デジタルソリューション本部では大きく分けて二つの事業に取り組んできました。一つは、AIやデータを活用した車両・線路・電気設備の保守点検など、鉄道事業に欠かせない業務の効率化。もう一つは、「WESTER(ウェスタ―)ポイント」をはじめとするライフスタイル分野のマーケティングです。WESTERポイントとは、移動生活ナビアプリ「WESTER」やJR西日本のクレジットカードである「J-WESTカード」などと連携したJR西日本グループ共通のポイントサービスです。

それ以外にも、JAXA(宇宙航空研究開発機構)や京都大学大学院情報学研究科など、わくわくするようなビジネスパートナーの開拓も積極的に行っています。多くのビジネスパートナーとつながることで、新しい事業の種が生まれればと考えています。もちろん、すべてを事業化できるわけではないですが、だからこそ種をたくさんまいておくことが大切です。また、若く才能もあるデータサイエンティストやマーケターが挑戦できる場を設けるのも目的の一つです。「自分が手掛けたデータ分析が宇宙開発で活用される」なんて、想像するだけでわくわくしませんか?

飽くなき好奇心を持っているメンバーが多いので、みんなの好奇心をずっとくすぐり続け、高いモチベーションで働けるようにするのも私の役目です。これからはトレイルブレイザーの仲間も加わります。これまで以上にデータ活用を促進して、お客様に喜んでもらえるような体験を提供し、まずは西日本の人々の快適な暮らしを実現していければと考えています。

トレイルブレイザーは「日本はいつも西から変わる」というビジョンを掲げています。私たちが提供する体験が西日本地域によい変化をもたらし、日本全国、ひいては世界に広がっていくことを期待しています。

「西から日本社会全体を変えていく」。熱い想いを持った仲間と働きたい

今後の目標は、データを活用した鉄道事業のオペレーション効率化とマーケティングのさらなる推進です。画像の解析技術など鉄道事業で培ったノウハウは、他の分野でも活かせるので、社会課題の解決につながるレベルまで発展させていきたいですね。

マーケティング分野については、人口減少を見据えた戦略を実行していきます。西日本は首都圏よりも先に人口が減っていくので、何もしなければ衰退していきます。スピーディーに結果を出さなければなりません。そこで私たちは、膨大なデータを集約・活用し、一人ひとりに合わせたサービスを提供して体験価値を向上させ、個客単価を高めることをめざしています。たとえば、鉄道の切符を買うお客様とショッピングセンターで買い物をするお客様を個々で考えるのではなく、一つの流れとして捉え、データにもとづき行動を予測。欲しいもの、必要なものを動線上の適切な場所に配置するといった施策です。せっかく同じものを買うならこの流れで買った方がおトクで便利で楽しいよね──。そんな個客体験を一つずつ積み重ねることで、お客様に価値ある“WESTER体験”を提供したいと考えています。

JR西日本の事業は鉄道から小売り、不動産、宿泊業までカバーしており、そこで集めたデータは、世の中の社会活動の縮図のようなものです。価値あるデータにすぐアクセスし、施策を実行できるスピード感とスケールの大きさは私たちの大きな強みです。

私たちの目標を達成するためには、「西から日本社会全体を変えていく」という志に共鳴してくれる仲間が必要です。トレイルブレイザーでは、2025年度末までに150人規模の組織に成長させる計画を進めており、「企画推進」「デ―タ分析・利活用」「システム開発」の領域で人材を募集しています。 

西日本は首都圏よりも早く、人口減少などの問題に直面するでしょう。それらの課題を解決する先例を示し続けることにこそ、JR西日本の一員であるトレイルブレイザーの存在価値があります。存在価値を発揮するには優れたスキルだけではなく、熱い想いが不可欠です。トレイルブレイザーの志に共鳴してくれる方と一緒に、より良い社会をつくっていけたらと考えています。

※ 記載内容は2023年11月時点のものです

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