OUTLINE
CLIENT
MISSION
【第7話】地図は完成した、そして冒険は続く〜新メンバーとPDCAの旅〜

イントロダクション
苦労の末に完成したプロジェクトの計画書。チーム全員の知恵を結集して作られた「新しい仕事の進め方」。完成した瞬間、誰もが達成感に満たされます。「これで明日から仕事がうまくいく」と。
しかし、その数週間後、その輝かしいドキュメントはどうなっているでしょうか。多くの場合、それらは共有フォルダの奥深くに眠り、誰にも開かれることのない「デジタルな文鎮」と化してしまいます。現場はいつの間にか元のやり方に戻り、せっかくの改善活動も「やっただけ」で終わってしまう。これは多くの組織が経験する、悲しい“あるある”な光景です。
どんなに優れた地図も、冒険に持っていかなければ意味がありません。私たちの「シン・マーケティングプロセス」ver1.0も、ついに完成の時を迎えました。しかし、本当の挑戦はここから始まります。この地図を、いかにしてチームの血肉とし、進化させ続けるか。第7話は、第一部の締めくくりとして、完成したプロセスを「文化」へと昇華させるための、終わりなきPDCAの旅の物語です。
前回のお話はこちら:シン・マーケティングプロセス戦記【6】
本記事のポイント
● 作ったプロセスが「形骸化」する課題。 プロセスが現場の実態と乖離したり、改善の仕組みがなかったりすると、誰も使わない「石碑」と化してしまう。
● PDCAサイクルと「顧客育成ロードマップ」の活用。 プロセスを「生き物」として機能させ続けるため、顧客のフェーズごとに課題・目標・KPI・施策を定義し、継続的に改善する仕組みを導入する。
● 新メンバーの視点がプロセスを進化させる。 完成したプロセスであっても、外部からの客観的な視点を取り入れることで、盲点に気づき、さらなる改善へと繋げることができる。
解くべき課題:「形骸化」という静かなる病
「ルールを作っても、誰も守らない」「プロセスを定義しても、誰も見向きもしない」。この「形骸化」という病は、なぜ発生するのでしょうか。原因は主に3つ考えられます。
● 現実との乖離: 机上で作られたプロセスが、現場の実態と合っておらず、「使いにくい」と思われている。
● フィードバック機構の不在: 使ってみて感じた問題点や改善案を、プロセスに反映させる仕組みがない。
● 「作って終わり」の文化: プロセス構築が一度きりの「プロジェクト」として扱われ、継続的な「運用」と見なされていない。
プロセスは、一度作ったら完成する「石碑」であってはなりません。ビジネス環境や顧客の変化に合わせて、常に姿を変え続ける「生き物」であるべきです。
解決へのアプローチ:地図を更新し続ける「航海日誌」
プロセスを「生き物」として機能させ続けるために、「シン・マーケティングプロセス」の最終フェーズには「マーケティングPDCA」の仕組みが組み込まれています。
PDCA(Plan-Do-Check-Action)自体は誰もが知る改善サイクルですが、私たちのプロセスでは、これを具体的に回すための強力なツールとして「顧客育成ロードマップ」を用意しました。これは、顧客がサービスを知り(認知)、興味を持ち(興味)、購入を考え(検討)、購入し(購入)、そしてファンになる(拡散)までの一連の旅路を可視化したものです。
そして、各フェーズごとに、以下の4つの項目を定義します。
1. Before(現状の課題): 今、顧客はこのフェーズでどんな状態か?
2. After(目指す状態): 私たちの施策によって、顧客にどうなってほしいか?
3. 成功基準/指標(KPI): 「After」の状態になったことを、どうやって測定するか?
4. Action(具体的な打ち手): 「After」の状態を実現するために、具体的に何をするか?
このロードマップがあることで、PDCAの「Check(評価)」が非常にやりやすくなります。「今月のKPIは目標に届かなかった(Check)。原因は広告のクリエイティブかもしれない。よし、来月はA/Bテストをしてみよう(Action)」というように、データに基づいた具体的な改善アクションに繋げられるのです。これは、マーケティング活動の旅の記録をつける「航海日誌」のようなものなのです。
プロジェクトでの実践録:新メンバーの鋭い一言が、チームを次のステージへ
完成した「シン・マーケティングプロセス ver1.0」の資料を前に、既存メンバーはどこか誇らしげな表情でした。そこに、その月に入社したばかりの新メンバー、佐々木さんが加わりました。
皆川が「忌憚のない意見を聞かせてほしい」と問いかけると、佐々木さんはまず、プロセス全体の体系性、特に各ゲートの完了条件が明確な点を称賛しました。メンバーの表情がほころんだ、その時でした。
「ただ、一点だけ。前職(大手EC企業)での経験からすると、このロードマップ自体を見直し・変更するプロセスも入れておきたいです。特に、プロジェクトを進めていく中で、元々想定していたターゲット顧客と作成した『顧客育成ロードマップ』の間にズレが生まれてきていないか、を確認するような、目的と現在地を踏まえた振り返りのプロセスを入れたいです。」と彼女は続けました。
「例えば、ここのKPIの部分について、コンセプトやプロセスが明確になるにつれ、見るべきKPIも変わってくると思います。例えば、初期的には購入フェーズのKPIを『購入者数』と置いていると思いますが、コンセプトを深めていき、目指すべきゴールとプロセスが明確になってくると、『新規購入者数』と『リピート購入者数』に分けた上で、どちらに対してのアプローチの方が必要なのか、明確にしていく必要が出てくると思います。また、購入者数は上がっているが、思ったよりも伸びが遅い、となったときに、こういったKPIの見直しをすることで、新規獲得施策がリピーターにしか効いていない、といったことも気づくきっかけとなるため、施策の効果もよりクリアになります」。
その瞬間、会議室の空気が引き締まりました。元広告代理店出身の稲本は、「確かにこのプロセス自体をPDCAで改善していく視点を、我々も忘れてはいけない」と感嘆しました。
さらに、PdMである清原は即座に具体的なアクションを提案します。「よし、早速このプロセス文書に『改訂履歴』のページを追加しよう。そして、私のToDoに『四半期ごとのプロセス見直し会』を設定し、それぞれのプロジェクトでの取り組み結果を反映していこう。ブラッシュアップを続けてより良いものにしていきましょう」。
佐々木さんのたった一言が、チームに新しい風を吹き込みました。それは、このプロセスが「完成品」ではなく、これからもメンバーと共に成長していく「未完成のプロセス」であることを、全員が再認識した瞬間でした。
今回のまとめ
● プロセスは「完成品」ではなく「生き物」である。 ビジネス環境の変化に対応するため、一度作ったプロセスも常に見直し、改善し続ける必要があります。
● PDCAを回す「仕組み」を設計する。 定期的な振り返りの場を設け、データに基づいて改善アクションを決定するサイクルを具体的に計画することが、プロセスの形骸化を防ぎます。
● 常に新しい視点を歓迎する。 新メンバーや他部署からの客観的なフィードバックは、プロセスの盲点を発見し、進化させるための貴重な触媒となります。
【次回予告】 《第二部》 地図を手に、新たな大陸へ
〜 実践編:僕らの本を出しちゃおう! 〜
第一部、完!ついに完成し、進化し始めた僕らの“地図”。さあ、この地図を手に、最初の冒険に出かけよう。岡村さんの一言が、チームを新たな、そして壮大な旅へと誘う。「このプロセス、社内だけじゃもったいなくない?…本にしちゃおうよ!」。次回、第二部開幕!お楽しみに!

entry() エントリー